《MUMEI》

「…椎名くんが、守ってくれたんだね。
本当に、ありがとう」



私がもう一度頭を下げると、



「いや、おれ酷いこと言っちゃったし…ごめん。
蓬田は、勉強とかいろいろ頑張ってたのに…」



という椎名くんの言葉に、
私は笑ってしまった。



「…なんだよ、何が可笑しいんだよ??」



不思議そうな椎名くんに、



「…椎名くん、何も悪くないのに謝りすぎなんだもん。
―…そうだ、私、1回叩いて」


「…はあ??」


「今朝、叩いちゃったでしょう??
―…だから、」


「…ってお前、それおれの体じゃねえか」


「あ、そっか…!
―…でも、痛みは貰っとかなきゃ、ね??」



私が言うと、



「じゃー、目ぇ瞑って、歯ぁ食いしばれ」



椎名くんが言った。

言われたとおりにすると、




ピシっ



おでこに、小さなちいさな痛み。



目を開けると、



笑顔の椎名くんが、いた。



「デコピンでチャラな。
…空手技だって、変なことに使っちゃったし」


「―………」


「…結局、悪いのは全部アイツってことで!!」



―…本当に椎名くんって、どこまで優しいんだろう。





『ありがとう』





私はもう一度、心の中で呟いた。

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