《MUMEI》

楽しいんです。

御側で幸せを感じながら、御世話をさせて頂くのが。

この御方を──。

「リュート」

「‥!」

いけません‥。

また僕は‥無意識の内に牙を立てようと‥。

「リュート──」

「はい」

「リュートは‥どこにも行かないでね‥?」

 そう仰ったアンリ様の両手をとり、僕は頷きました。

「僕はずっと──貴女様の御側に居ます」

「血が‥必要だから‥?」

「‥勿論‥それもあります。ですが──」

 僕は少しの間を開けてから、もう一度口を開きました。

「愛しているんです、貴女様を。貴女様だけを──」

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