《MUMEI》

僕の言葉に安堵されたのか、ようやく微笑んで下さったアンリ様。

「ありがとう、本当に」

「いえ、御礼には及びません」

御礼を言うのは僕の方です。

こうして一緒に居させて頂いているのですから──。

「ねぇリュート──」

「如何なされました‥?」

「ううん、ただ──」

アンリ様はゆっくりと瞼を伏せ、僕に寄り掛かるようにしてこられました。

「こうしていると安心するの」

アンリ様は、いつに無く穏やかな表情をされています。

無意識に、僕はこの御方の背に腕を回して、そっと抱き寄せていました。

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