《MUMEI》

「リュート‥、リュート‥?」

「‥! はい、アンリ様‥」

「腕──‥」

アンリ様に仰られて、ようやく気付きました。

「も、申し訳ございません‥!」

慌ててアンリ様の背に回していた腕を離すと、只俯くしかありませんでした。

「ごめん、気にしないで。ちょっとびっくりしただけだから──」

そう仰せって下さいましたが、この御方はやはり動揺されているようです。

染まった頬が、それを物語っています。

僕はどう切り出すべきかが分からず、言い掛けては口籠ってばかりいました。

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