《MUMEI》

「華郎ー、おーい聞こえるかー?」

 耳元で仮の名を呼ぶ若人。

 それを受け流す雛菊。

「華郎ー?」

「喧しい。少しは黙っておられぬのかお前は」

「おー、やっと返事したな」

「‥返事など、断じてしてはおらぬぞ」

「してんじゃん」

「むっ‥、拙者は‥」

「もう止めようぜ? 意地張るのはさ」

 草助に肩を小突かれ不快に思いながらも、雛菊はそれ以上言うのは無駄だと悟ったか、黙り込んだ。

 すると草助が唐突に切り出した。

「よし、風呂貸して貰いにいくか」

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