《MUMEI》 アンリ様は僕に寄り掛かられたまま、御休みになってしまわれたのか──ずっと目を閉じてらっしゃいます。 御部屋に御連れしなければなのですが、起こしてしまわないでしょうか‥。 とはいえこのままでは御風邪を召されてしまいます。 開けていた窓を閉めてから、アンリ様を横向きにして抱き上げて、長い廊下を進んで行きます。 アンリ様の御部屋は奥から2番目。 その御部屋以外は、全て空き部屋になっています。 以前は沢山の御親族と住まわれていたそうなのですが──何か事情が御有りのようで、今この御邸には僕とアンリ様の2人きり。 2人で住まうには広過ぎる御邸ですが、僕はここで働く事を苦に思った事はありません。 前へ |次へ |
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