《MUMEI》 祥ちゃんに言われたこと、 祥ちゃんは椎名くんに言ったつもりなんだから、 ちゃんと本物の椎名くんに言わなくちゃいけないよね… 考えながら、図書室のドアを開ける。 昨日と同じ席に、椎名くんはまた突っ伏していた。 私と椎名くんの他には、誰も居ない。 …また、寝てる。 そっと、椎名くんの隣のイスに腰を下ろす。 ふと、思った。 『私』の姿をしてるけど、 今ここで眠ってるのは椎名くんなんだよなあ… で、私は、『椎名くん』の姿をしてるけど 私なんだ。 だから、例えば―… 例えば、私が椎名くんにキスすれば、 椎名くんと私がキスすることになるんだよね―…? 夕日が、図書室全体を優しく包み込んでいる。 このオレンジ色の空間には、 私と、椎名くんしかいない―… 前へ |次へ |
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