《MUMEI》
樹は新聞をめくる。
意識的に、経済や福祉の頁に視線を移す。
「大学の廊下で教授が大量に麻薬服用して自殺……」
不意に静流は自分と樹を隔てている新聞の裏の記事を朗読する。
「……生徒が見付けたんだって、コワイ〜…」
「はあ…… 静流、母さん起こしてきて。」
「怖いの?俺が兄貴をちゃああんと守ってあげるから安心してよう!」
静流は樹の首に巻き付いた。過度なスキンシップ
学校を休んでアヅサや若菜に五月蝿くされるのは堪えられないので、樹は結局登校する。
「樹は今日お休みしないのか?俺がせっかく可愛がってやるってのに」
自転車に跨がる途中でアヅサが得意の一方通行会話を仕掛ける。
(……ホラ、来た)
樹は心の底で呟いた。
靴箱の中はいつも通りだった。胸を撫で下ろす。
廊下の隅に若菜が居た。
声を掛けようとするが、彼女の声で他にも人を確認できた。
「手紙で呼び寄せといて、用件はそれだけ?」
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