《MUMEI》
孤独への恐怖
震える体に、七生の俺を呼ぶ声。
聞こえないふりをしながら自転車に跨がる。

何処までも、七生の声が聞こえないところまで走っていたい。

期待してしまう俺。
七生が俺を追い掛けてくれるんじゃないかと。

俺は甘い。


お姫様に召し使いは勝てないのに。




天秤で釣り合うように、七生が囁いて叫んでくれていた分、俺だって七生を好きな気持ちは負けないと思っていたのに。

今日、この時この場所で七生はあんなに楽しそうに瞳子さんとお話ししていた。

……そっか、忘れられるんだ七生は。

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