《MUMEI》

「良いなっ、断じて入って来るでないぞ‥?」

「分かってるって。いいから早く入って来いよ、風呂」

 苦笑せずにはいられない草助に、雛菊はもう一度念を押し、盥や手拭やらを手にガラリと戸を開ける。

(さて‥どうするかな‥)

 おかしな誤解をされる前に済ませてしまおう。

 そう思い念の為持ち合わせていた大布を体に巻いて湯に浸かる。

「───────」

 息を吐いた途端、戸が開く音がして雛菊は振り向いた。

「ばっ‥‥馬鹿者っ! 入って来るなと──」

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