《MUMEI》
彼女のマモルモノ
「えっと・・その話があるって聞いたんですけど・・何ですか?」
自分が言いたいことがある程度は伝わったと思い、話題を変える。
「あ〜それか、えっとねぇ〜。まぁ、とりあえず座りなよ。」
そう言って彩詩はベットへと腰を下ろし隣をポンポンっと叩いて示す。しかし、狩月は、なかなか座ろうとしない。
「す・わ・り・な・さ・い!」
顔は笑顔なのに何故か体が震えてきた。おそるおそる隣へと座ると、満足そうに頷く彩詩。
「さてと・・聞きたいことって言うのはさ、守護騎士についてなんだよ。」
彩詩はそう話を始めた。
「変な事聞いてるのは分かってるよ。だけど、こっちの世界初めて来たって言うならなおさら聞いておきたいんだよ。」
「でも・・俺はフィリアス教のことなんて全然知りませんよ?それで答えられるか・・」
言いにくそうに答える狩月の言葉をさえぎり言葉を続ける彩詩。声に明るさが無い。
「フィーリングって言うのかな?そんな感じで構わないんだ。君は守護騎士って言うのは何のために在るんだと思う?」
「それは・・やっぱり何かを守るためじゃないんですか?」
「うん、そうなんだけど・・君はさっきの部屋で鎧、見てたよね。」
あの傷だらけの鎧のことを言っているのだと思い答える。
「すみません、勝手に見てしまって・・あの鎧ですよね?たぶん傷のついた・・」
「そう、それ。で・・・話を戻すけど、守護騎士は何を守るべきだと思う?」
ほんの少し辛そうに見えた・・すぐに表情は元に戻ったが、声は寂しげ・・そんな気がする。
「何を・・ですか。教会とか街の人じゃないんですか?」
考えられるのはそのくらい・・何故こんなことを聞くのだろうそう、不思議そうな顔をしながら答える。
「うん、私もそれは解ってる。じゃぁさ・・その二つのうちどちらかしかも護れないとしたら?どっちを護るべきなんだろう・・正しい答えなんて無いのかもしれないけど・・君の考えを教えてくれない?」
答えに困り沈黙する狩月。その横では彩詩がうつむき待っている。沈黙、長くないのかもしれない。だが二人には長く感じただろう。意を決したように言葉を発す狩月。
「質問の答えになっているのかわからないんですけど・・俺はどっちとも護れるように全力を尽くします。」
真っ直ぐ彩詩の方を向きしっかりと答える。彩詩は少し間を置き、
「どっちもか・・それが理想的な答えかな。私には答えることができない答えだけどね・・」
少し昔話を聞いてくれるかな?そう問う。狩月は先を促すように頷く。

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