《MUMEI》 二人の騎士街で飛び回った噂は王宮内にも瞬く間に広まっていき、一人の騎士の耳にもとどいた。彼はそれを聞くと興味を示したようで、同期の騎士のもとへと向かい歩いていく。 その騎士の居るであろう部屋の前に来るとノックもせず扉を開けた。 「邪魔させてもらうぜ、カイル。大事な話があるんだ」 部屋の中に居た黒髪黒瞳の騎士、カイル=ハイリッヒは驚いた様子も見せず、彼の顔を流し目で見ると本に視線を戻し、興味の無さそうな声を出す。 「・・エドか、オレはあまり暇じゃないんだ」 カイルは興味のないものに対して壊滅的なほど無頓着で、聞く耳を持たないため何かで気を引かなくてはならなかった、そのためエドは言い回しを変えカイルを誘った。 「それじゃあ単刀直入に言わせてもらうぜ、俺に付き合ってもらう」 ページを捲る手が止まり、またエドのほうを向き嫌そうな顔をするカイル。 カイルの気を引くことに成功したエドは、何となく次の答えがわかっていたのでカイルが口を開くより早く続けた。 「興味ないなんて言わせないぞ、宮廷神官のハイムっておっさんがいただろ、あいつが昼間に殺害されたらしい。その犯人が仮面をつけた男らしくてな、これがなかなかの手練らしいんだ。俺に声はかかってないが黙ってるわけにもいかない、当然手伝ってくれるよな」 にんまりと笑顔を作り、行儀悪く椅子に座っているカイルへと近づいてくる。 カイルは諦めたようにため息を一つつき、しぶしぶ承諾した。 「断らせてはくれなさそうだからな、付き合ってやるよ」 本を置くカイルの肩に手をまわしスキンシップをとるエド、エドの良く梳かれた金髪が彼の顔に当たる、カイルはそれを煙たがっている。 「ありがとよ、やっぱり持つべきものは仲間だな」 「行くん・・だろっ!なら出発するぞ」 さっさと終わらせてしまいたいカイルはエドを引き離し扉をあけ出ていく。 「どっちが当たりだと思う」 事件現場は予測できて二つだった。なぜ二つに絞られるのかと言うと、 「下街の広場か、礼拝堂のどちらかだな。今回のことはオレたちの耳まで届いてない、広場が妥当だろう」 「ああ、礼拝堂でやるんならそれなりに重い刑だ。俺たちの耳に届いててもおかしくないからな」 つまりは刑罰を与える場所はこの二つしか存在しないのである。広場前は軽い罪で済んだ者が、礼拝堂は重い罰を科せられた者、という風にはるか昔からの決まりであった。 そのためカイル、エドの二人は下街の広場へと向かうため進んでいく。足並みはそろうことなく、カツカツと不規則な足音が響いていた。 前へ |次へ |
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