《MUMEI》 一般人「ええ、この二人が――」 副長が説明しようと口を開く。 しかし、隊長がその言葉を止めた。 「二人って、もう一人はどこだ」 「え、どこって、そこに……」 言いながら、副長は凜へと顔を向ける。 すると、凜は小さく首を振った。 副長は意味がわからないのか怪訝な表情をして凜を見つめる。 「その人には、わたしは見えてないんですよ」 仕方なくといった様子で凜が言う。 すると、ようやく理解したのか副長は大きく頷いた。 「あ、ああ。そうだったな。そうだった」 「……誰と話してるんだ、藤沢」 もともと険しい表情をしていた隊長が一層険しく眉間に皺を寄せている。 慌てて副長は「いえ、なんでもありません」と首を振った。 「まあ、いい。それで、この忙しい最中に一般人を連れて来た理由を聞かせてもらおうか」 厳しい表情のまま隊長は羽田に目をやりながら言った。 どうやら少し苛立っているようだ。 普通に考えれば当然かもしれない。 言ってみれば、戦争中の軍隊の中に一般人が紛れ込んだようなものだ。 今の羽田は明らかに邪魔者である。 もしかすると、副長に悪いことをしたかもしれない。 そう思いながらも、羽田は何も言わず、副長の様子を眺めていた。 前へ |次へ |
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