《MUMEI》
虚構
今オレは成長期だ。
そんなの来なくてもいいのに。
小6の時点でオレは169.8cmあった。学校で一番デカい。
母さんなんて小4の時に抜いた。
オレがこんなに大きいのは、父さんの遺伝子のせいだ。その上バスケもやってるし。
そんな訳でオレはソファから落ちる。
父さんは多分、180cm以上はあったはずだ。
だからこれ以上大きくなると、ますます父さんに似ていく。
それだけは避けたかった。
――父さんが出ていって5年。
高校生になった今、とうとう184cmに。
まだ伸び続ける身長。
鬱になるかも。
『瑞季はだんだん馬鹿息子に似ていくねぇ。だけど瑞季はアレと違って頭もいいし、良い子だし、何でもできる。頼むからあんな人間にはならないでくれ』
ばあちゃん――父さんの母さんはオレにそう言ってきた。
当然だよ。
なるつもりないし、なりたくもない。
母さんは…ガリガリに痩せ、美人の面影もない。
精神的にも不安定になり、パートにも出られなくなった。
父さんの言葉通り、毎月十分すぎるぐらいの金額が振り込まれる。
しかし一度として連絡はない。
金さえ払えばいいってもんじゃないだろ。
そう思っても、相手には言う方法はないけど。
あぁ―――……‥
なんて虚しい。
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