《MUMEI》
「ち、ちょっと!みつ、…長沢ッ!」
力いっぱいもがくがびくともしない。
あれだあれ。
カブトムシを掴む少年。
俺と貢は少年とカブトムシ位の差がある。
少し前に本気パンチを手の平に受け止めてもらった事がある。
ペチッ!
な〜んて…
可愛い過ぎる音しかしなくて、その後抱き込まれて散々可愛いがられた。
俺がどんなに本気になっても貢の手の平に痺れを走らせる力さえない現実。
「聖ちゃん、ダメだってそれはまずい!擽ったい、勃っちゃう!あ〜もう可愛いッツ!!」
「何もしてねーだろ!離せ!離せよ〜!」
「モゾモゾ動いて俺の全身愛撫してんじゃん!も〜堪んない!やっぱり全身舐め回したいっ!聖ちゃん!聖ちゃあん!!」
「盛るな!ヤッ!貢ッ!…ァはぁ……」
ビクンと全身に電流が流れた様な衝撃。
乳首を爪先で挟まれただけ、なのに!
「はぁァん……」
全身から力が…抜ける。
「随分抱き込んだみたいだな〜、すっかり雄っ気の抜けた猫ちゃんになっちまって」
「先生、準備室お借りしたいんですけど」
「あ?ああ、ま、…いいか、……佐伯先輩の弟じゃ…、まあ仕方ないか……あの人敵にまわすと怖いし…………」
全校生徒に怖いと恐れられている松本に怖がられる陸ちゃんって一体!?
「まさか見返りあんだろ?な?、長沢…」
へ?見返り?って?
力の抜けた俺を横抱きにしながら貢は言った。
「…そりゃ多少は、でもキスと本番だけはダメです、他なら良いですよ」
「なっ!!み、貢!!」
松本は親切にトイレの扉を開け、そして隣の準備室も開けてくれた。無駄にもがく俺を抱えた貢を準備室奥の部屋に促す。
準備室の扉がピシャリと閉まる音がして、数秒してまた扉を閉める音。
「二重に鍵閉めたし、ここ近寄る生徒もいないし、さあ楽しむか」
「開かずの扉の中って部屋になってたんですね…」
貢は俺をベッドに寝かせながら言った。
「…ああ、昼寝しやすい様に過ごしやすい俺だけの部屋にしたんだ、元はここは乱雑な物置になっていたんだ」
ここの準備室は生徒は一切立入禁止になっていて、松本の許可無しには入れない事になっている。
それは危険な薬品があるからという当たり前な理由なのだけれど。
一歩も入った事のない準備室の奥に更にこんな部屋みたいなスペースがあるなんてびっくりで、しかもベッドまで!
「聖、ほら時間なくなるから」
「ヒャッ!やだあ!ちょっ!」
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