《MUMEI》
百面相
   〜海視点〜


歩の次の言葉を待つ間に、午後の授業開始の予鈴がなってしまった。


しかし、歩は一向に口を開こうとしないし教室に帰ろうともしない。


何考えてるのか知らないけどチャイム聞こえてないんだろうな・・・


歩って集中力あるよな。決していい意味じゃないけど!


それにしても歩って百面相だな・・・見てると吹き出しそうになる。


ちょっと怒った顔をしたかと思うと、いきなりニヤニヤし始めたり、たまに自分にツッコミをいれたりもしている・・・


かと思えば切なそうに目線を下に落としたり、眉間にしわを寄せて手を口にあて唸ってみたり・・・


歩の思考回路ってどうなってるんだろう?


ちょっと覗いてみたいかも・・・

本来の趣旨を忘れかけて俺は歩の一人劇を見ていた。


午後の授業開始の本鈴が鳴っている時に歩がポツリと言葉を零す。


「やっぱり栄実が来るまでは下手なことせずに様子見るしかないのかな・・・」


その声はチャイムにかき消され、聞き取ることができなかった。


歩にこれ以上聞いても、状況は分かりそうにないなぁ・・・


歩自身よく分かってないみたいだし。


まぁ状況が何となく把握できたし、今は俺も手一杯だから何もしてやれないけど、歩と麗羅チャンなら大丈夫だろう!


俺は根拠のない考えを信じることにした。


授業始まっちゃったしな〜歩はまだ何か考えてるみたいだし・・・


ふと歩のお弁当箱を見ると空になっていた。


ちゃっかり全部食べてるよ・・・。


俺は青い空を見上げ心地よい風を感じながらお弁当を平らげた。


そして次の授業まで屋上でゆっくりすることにした。

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