《MUMEI》
「オハヨー樹!先生まだ来てない?やっばいやっばい、学校来てるのに遅刻になっちゃうよ!」
若菜はいつも通り笑顔で斜め前の席に着いた。
あれは……何だったのか。尋ねることが出来ない。
体育の後、早々に着替えた、誰もまだいない教室。
水分を補給しようと烏龍茶のボトルに手を伸ばす。
「……待て」
アヅサだ。
俺は手を止めた。
アヅサに言われるがままに水道に行き中身を流す。
――――黒い塊
悪寒が止まらなくなった。
「害虫飲ませようなんて、いい度胸してるな」
アヅサはボトルの裏で既に溺死してるそれを潰した
醜い長い触角だけが底からはみだしている。
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