《MUMEI》

この場の状況を理解出来ずに立ち尽くしていると、
父さんが物凄い形相をして、
リビングから飛び出してきた。


だんだんと、母さんの顔が難しい顔になる。


「母さん…父さん……?」


交互に目の前にいる二人を見つめる。


二人はお互いを睨みつけ合っていた。


「颯馬。
話しがある。ちょっと来なさい。」


「駄目よ!
颯馬!!行っちゃ駄目!!」


「…え………え?」


すると、父さんは俺を庇うようにして、
俺の目前に立っている母さんを蹴飛ばした。


「キャアっ!」


母さんはその鍛えぬかれた足に、
堪らず壁に激突した。


頭を打つ鈍い音が響き渡る。


「母さん!!」


母さんの側へ寄って何度か声を掛けて見るも、
応答がない。


「…か…母さんに何…したんですか……!」


「気を失っているだけだ。」


父さんは興味無さ気にそう言うと、
俺の襟首を片手で掴み上げた。


「…っ放してください!!」


必死の抵抗も虚しく、
俺の身体さリビングへ引きずられて行く。


どうして…どうしてこんなことになったのだろう。


どうして………?

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