《MUMEI》

「やっと出て行った‥」

 雛菊は大きく溜め息を吐き、空ろな目で天井を見上げる。

「‥ふぅ‥」

 偽るのも疲れる、と雛菊は思う。

 だがこうする他ないのだから仕方がない。

「──────‥」

 厄介だ、と思いつつ、昨晩の事を思い出してみる雛菊。

『‥‥、済まぬ、借りが出来たな‥』

『──ふぅ‥。危なかったなぁ、ちび助』

『な、何だその呼び名はっ』

『わりいわりい、でもまだお前の名前知らねぇからさ』

『華郎だ。蓮華の華に太郎の郎』

『華郎‥? また随分変わった名‥』

『ぅ‥煩いっ』

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