《MUMEI》
誕生日 〈おれ〉
「かなめ、明日は早く帰ってきなさいよ??」



晩飯を食っていると、蓬田ママがおれに言った。



「え?…何かあるんすか」



おれが訊くと、



「何かって―…あなた、自分の誕生日も忘れたの??」



と、蓬田ママは可笑しそうに笑った。



…明日、蓬田の誕生日だったのか…



「あ、それとも椎名くんと約束あった??」



その言葉に、おれはむせた。



「ゴホッ、ゴホ…―…な、なに言って―…」


「あら、図星??…いいのよ、デートでも何でも」


「………」



なんだ、ばれたのかと思った…



って、蓬田ママ、何か勘違いしてねーか??



「いや、デートとかでは、ないです」



決して、とおれが付け加えると、



「あら、そうなの??つまんない。
―…パパ、明日は早く帰ってくると良いわね」



と、蓬田ママはまた寂しそうに笑った。




…誕生日、か…

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