《MUMEI》 おれが駅についても、蓬田はなかなか現れなかった。 電車が出発する間際になってようやく現れた蓬田は、 「お、おおおおはよ!!」 と、やたら『お』が多い挨拶をしてきた。 「おう、おはよう」 おれも答える。 おれがボックス席に腰掛けても、蓬田は座ろうとしない。 「…どーした??座れば?」 どうせ、この時間の電車は空いてる。 おれが促すと、 「う、ううん!立っとく!!―…ほら、体力つけなきゃ!!」 と蓬田は言って、窓の外に顔を向けた。 …やっぱ、怒ってんのかな―…?? 口はきいてくれるけど、ぎこちないし… 「なあ、蓬田、昨日は―…」 おれが謝ろうと口を開くと、 「あ!…そうだ!! あっちの車両の方が立ちやすそうだから、 あっちに移るね!!」 蓬田は、おれの言葉を遮るようにそう言って、 隣の車両に移ってしまった。 …何なんだよ、一体。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |