《MUMEI》 蓬田を、見つけた。 配達を終えて、おれの家の前に自転車を停めているところだった。 『きゃんきゃん!!』 ゴジラの鳴き声に、蓬田がはっとして振り返る。 おれに気付くと、決まり悪そうに俯いた。 「…あのさ!!」 おれが大きな声で言うと、蓬田はビクッと肩を震わせた。 「おれ、昨日のことなら謝るよ。 …でも、ほかに何かあったのか?? ―…言ってくれねえと、わかんねーよ」 おれが言うと、蓬田は顔を上げ、首を横に振った。 「…ち、ちがうの!! 私の問題なの、全部―…」 何か、蓬田が泣き出しそうだったから、 おれは、 「ちょっと、来い」 と、蓬田の手を取って歩き出した。 前へ |次へ |
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