《MUMEI》

アンリ様は、一緒に雪を払うのを手伝って下さいました。

「リュート、手──冷たくない‥?」

「はい、大丈夫です」

「──ね、向こうの方も行ってみない?」

「向こう‥ですか?」

「もうお花は咲いてないけど──行ってみたくなって」

アンリ様が行きたいと仰られたのは、薔薇の咲いていた場所。

もう花は枯れてしまったのですが──その場所が落ち着くそうで、御覧になりたいのだそうです。

僕はアンリ様の手を引いて、薔薇園へと向かいました。

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