《MUMEI》

「…なんか、変な態度とっちゃってごめんね。
それから、わざわざありがとう!!」



と、椎名くんに頭を下げると、



「…や、別にいんだけど、―…あの、さ」



何か言いたげな椎名くん。


しばらくの沈黙の後、


椎名くんは、持っていた鞄から箱を取り出して、私に押し付けた。



「―…それ、やる」



私が箱を受け取ると、椎名くんはぶっきらぼうに言った。



「…え…??」


「口に合うか、わかんねえけど」



箱を開けてみると、



中には、すごくおいしそうなシフォンケーキが入っていた。


…これ、私に…??



椎名くんが、私に作ってくれたの…?



椎名くん、甘いもの苦手なのに―…



勝手に、涙が溢れてくる。


何も言えずにいると、
椎名くんが慌てたように喋り出した。



「…や、別に、なんつーか…
せっかく誕生日だからさ、何か―…」



―…ものすごく、嬉しい。



泣いたら、椎名くんが困るのは分かってるけど…



嬉しすぎて、もうどうしようもなかったんだ。

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