《MUMEI》 「ごめん、分かった、それ持って帰るから、な!? ―…だから、泣き止めって―…」 椎名くんが慌てたように立ち上がり、 箱に手を伸ばそうとする。 ―…違う、違うの!! 私は、椎名くんの手を掴んだ。 「…あ、あり…ありが、とう…」 うまく、声が出せない。 椎名くんは私の前にしゃがみこむと、 泣いている私を見上げて、言った。 「…誕生日、おめでとう」 優しい声。 それは『私』の声だけど、紛れもなく、椎名くんの声。 ―…ありがとう。 感謝しても、しきれないよ―… 伝わってるかな、この感謝の気持ち。 前へ |次へ |
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