《MUMEI》 訪れたこの場所には、咲き乱れていた薔薇の姿はもう無く、ただ雪ばかりが積もっています。 「ベンチは座れないね──」 ベンチにも雪が積もっている為、以前のように座る事は出来ません。 「───────」 僕はベンチの雪を払うと、コートを脱いで座席に広げました。 「どうぞ、御掛けになって下さい」 「ぇ──」 アンリ様は驚かれたのか、目を円くしてらっしゃいます。 「でも、リュートのコート‥」 「──御構い無く。さぁ、御掛けになって下さい」 前へ |次へ |
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