《MUMEI》

病院は、もう閉まっていた。

…でも私は知ってる。

パパは残って仕事を続けてること。


それと、裏口からの入り方。



「椎名くん、ここから入って」



私は、裏口のドアを指差した。



「…私の鞄に鍵が入ってるから、それ使って」


「おう」



椎名くんは鞄から鍵を探し出すと、鍵穴に差し込んだ。


カチリ。



懐かしい音がして、鍵が開いた。



「ありがとう。…頑張ってね」



私が言うと、



「おう。…大丈夫、ちゃんとやるから」



安心して待ってろ、と言って椎名くんはドアの中に入っていった。


―…大丈夫。



椎名くんの『大丈夫』は、




世界で一番、心強い。

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