《MUMEI》 苦しそうに佇む颯ちゃんを前に、 俺はどうすることも出来なかった。 颯ちゃん……。 どうしてそんなに思いつめた顔してるんだ? どうしていつも一人で抱え込むんだ? 少しは俺に話してくれたっていいんだぜ? だっていつも俺は、 颯ちゃんに助けてもらってばかり何だから。 だから今度は俺の番だ。 今さっきまでは穏やかに流れていた風が、 今は冷たく感じる。 颯ちゃんの心を表しているようで、 俺はどう声を掛けていいか分からなかった。 ただ、哀れみの眼差しを向けるだけ。 なあ、颯ちゃん。 お前、どうしちまったんだ? あの時のお前は俺の目標だったんだぜ? 何があったんだよ? 前のお前の方がずっと輝いていたぜ? 一体何に耐えて来たんだ? 俺の胸中の呟きは、 虚しく砕け散るだけだった。 前へ |次へ |
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