《MUMEI》
覚悟
「なあ、取りあえず賢ちゃんと合流しねぇ?」


この重たい空気を変えたい一心で、
そう口をついた。


「どうせ学校戻れないし、な?」


いつもなら、そうだな、と微笑を浮かべながら返事をする颯ちゃんなのに、


「いや、いい。」


あっさりと断られた。


「家に帰る。」


「え?だって家には……。」


颯ちゃんの親父がいるかも知れないだろ?


「覚悟のうえさ。」


颯ちゃんは冷たく笑った。


「元は俺が招いたミスだ。
自分で始末をつける。」


「違う。俺だ。」


「え?」


「元凶は俺だよ。」


「何言ってんだよ。
蓮翔ちゃ……。」


「俺が!!
……俺が颯ちゃんを誘ったから!

俺が試合を観に来てくれって頼んだから!!

だから!!!」


「ちげーよ。」


颯ちゃんはフッと優しい目付きになると、


「それでも行くって言ったのは俺だろ?

だから蓮翔ちゃんは何も悪くない。」


そう言った。


どうしてそこまでして自分を追い詰めるんだよ……。


思わず泣きそうになった。

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