《MUMEI》

読み終えて顔を上げると、
しばらくして蓬田の父ちゃんは口を開いた。



「…お前は、小さい頃から動物が大好きだったから、
だから、たくさんの動物の痛みや死に向き合わなければならないこの仕事に、
…パパは反対したんだ」



蓬田の父ちゃんは、椅子から立ち上がるとおれの元に近づいてきた。



「…でも、ちゃんと考えてたんだな。―…すまなかった。
今日でもう、17歳だもんな」



そう言うと、蓬田の父ちゃんは微笑んで、
おれの頭をがしがしと撫でた。



「…誕生日、おめでとう。
―…お前なら、立派な獣医になれる。
パパが、保障する」



おれも嬉しくなって、笑顔になる。



「…今日は早く帰るよ。
―…これからも、早く帰るようにする。
ママに、そう伝えておいてくれ」


笑顔のまま蓬田の父ちゃんはそう言って、
蓬田の書いた手紙を受け取った。



―…届いたぞ、お前の気持ち。



よかったな、蓬田。

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