《MUMEI》

ベンチに敷かれた黒いコートの上に、ちょこんと御掛けになりながら、白いコートを御召しになられたアンリ様は何か考えてらっしゃるようです。

「如何なされました? アンリ様──」

「ぁ‥、ううん、ちょっとね、想像してたの」

「?」

「春になったら、また薔薇が咲いて──他のお花も沢山咲いて、きっと楽しいだろうなぁって」

「──そうしたら、花冠を作って差し上げますね」

「本当っ?」

「はい、勿論です」

「──じゃあ、楽しみにしてるね」

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