《MUMEI》
過去の記憶
「この街は4年前、魔物の大群に襲われたんだ。その時の話になる。私は守護騎士になったばかりの新米で、まぁ無茶ばっかりしてた。かっこよく言うと理想に燃えてたのかな。」
ゆっくりと話を進めていく。
「で・・そんなときに魔物が攻めてきた訳で・・当然のように私達は出撃して、街の自警団と協力して迎撃してたんだ。だけど・・数が違いすぎた。どんどん押され始めて・・前線は後退してった。悲惨だったけど、まだ何とかなると思ってたし・・今もそう思ってる。
だけど、教会は撤退命令を出した。その時教会に居た枢機卿を脱出させるための護衛にするためにね。」
立ち上がり窓を開け外を眺める彩詩。言葉を選ぶように・・思い出すためのように空を見上げている。
「その命令って街を見捨てるってことなんだよね。騎士を全部後退させれば・・当然全滅してしまう、そう反論も出たけど・・結局命令は覆らなかった。
だけど・・納得できない騎士たちは残って戦うことを選んだ。私の友人も残って戦うことを選んだ。私は・・命令に従うことを選んだ・・正直、死ぬことが怖かったから。」
情けないよね〜・・その声は悲しそうに聞こえた。
「護衛をしながら街を出ようとした時だった。クレスターデーモンって言う強い魔物が街に突っ込んで行くのが見えたんだ・・私の友人が残った所に・・ね。嫌だったし怖かった・・友人が死ぬかもしれない・・そう思ったから・・だけど動けなかった・・。でもロット団長は違った。それを見て半数の騎士を連れて護りに行ったんだ。私もそれについて行った。怖くて動けなかったはずなのに、団長がいるなら・・そう思えたのかもしれない。
街は酷い状況で至る所でヒトが死んでた。ずたずたに引き裂かれて・・ね。そんな中で私は友人の姿を見つけられたのは幸運だったのかな・・友人は子供を護って戦ってた。
たぶん逃げ遅れたんだろうね。10人くらいだったかな。魔物は四方八方から襲い掛かって来てて、何人かはすでに殺されてた。私達もそこに突っ込んでった。子供たちを守れってね・・」
ふぅ・・とため息をつく彩詩。表情は見えないが声は沈んだまま・・辛い記憶なんだろうな・・そう思って黙って話を聞き続ける。

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