《MUMEI》

サッと冷たい夜風が通り過ぎていく。
ユウゴはパーカーのポケットに手を入れて空を見上げた。
すっきり晴れた夜空だ。
しかし、街灯が明るいせいで星は見えない。
「あの二人、どうしてるんだろうな」
ユウゴは三人で見た夜空を思い出していた。
状況は今とほとんど同じだが、やはり一人ではなかったので余裕があったのだろう。
あの時見た夜空は今までで一番きれいに思えた。

 ユウゴは大きく息を吐きながら歩き続ける。
しばらくすると、前方に大きな公園が見えてきた。
中ではホームレスらしき人たちが段ボールや毛布に包まって転がっていた。
「……ここでいいか」
誰にともなく呟くと、ユウゴはトンネル型の遊具へと近づいた。
中には誰もいない。
何も包まる物を持っていないユウゴは、帽子の上からパーカーのフードをかぶると、トンネルの中へ仰向けになって入り込んだ。
そして、そのまま目を閉じる。
よほど疲れていたのだろう、すぐに意識が薄れてきた。
うつらうつらと眠りに落ちかけていたユウゴの耳に、数人の若者の笑い声が聞こえてくる。
酔っ払っているのだろうか。
周りのことを気にもせず、大声で話している。
ユウゴは半分眠った頭でその声を聞いていた。

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