《MUMEI》
矛盾だらけの心
   〜麗羅視点〜


昼休みも終わり、今は授業中。


窓から暖かい日が差し、眠りを誘う。


ぼーっとする頭の隅にチラリと顔を覗かせる歩。


歩と海どこに行ったんだろう?


午前の授業は居たのにな・・・

海に聞きたいことがあったのに、聞けなかった・・・帰りに忘れずに聞かないとな。


真星、友達と喧嘩でもしたのかな?


私の質問に少し焦っていたみたいだし・・・




考えることが一段落すると、頭の中にまた歩が顔を覗かせる。


頭の中の歩は私に笑顔を向ける。


歩の笑顔に胸がキューっと苦しくなる。


屈託なく笑う歩を見るとすごく安心する。


歩の笑顔を見るとずっと見ていたいって思う。


でも歩の笑顔に癒される度、その笑顔を壊してしまうことが怖くなる。


壊してしまう自分が嫌になる。


歩が笑顔で居るためには、私は歩の側に居ない方がいいのかもしれない。


"かも"じゃなくて側に居ない方がいいんだろうな・・・

それが分かっているなら離れてしまえばいいのに。


でも離れたくないって思ってしまう自分がいる・・・でも一緒に居て歩の笑顔を消してしまうのは嫌。


矛盾だらけの思いのせいで歩にどう接していいか分からない・・・。


どう接していいか分からないのは、そのせいだけじゃないけど。




そんなことを考えていると午後の授業も終わりに近づいていた。


あと10分か・・・。


時計を見て軽く息を付く。



あれ・・・?


私は何度かまばたきを繰り返す。


歩、帰って来てる。

あっ、海も居る。


私の視線の先には、椅子に座り授業を受けている歩と海の姿があった。


自分の世界に入っていたせいか、歩と海が帰って来たのに気が付かなかったようだ。


キンコンカンコーン――


そうこうしている内に授業終了の鐘が教室に鳴り響く。


授業が終わるとすぐにホームルームが始まった。


担任が後ろの小さめな黒板に書き込まれた幾つかの名前を見ながら


「よしよし。順調に部屋割り決まってるみたいだな!

この調子でサクッと決めてくれよ!


じゃあホームルーム終了!!気をつけて帰れよ〜」


っと言って、ヒラヒラと手を振り教室から去っていった。


ホームルームが終わるとすぐに席を立ち帰ろうとする海を見て、慌てて海に駆け寄る。

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