《MUMEI》
麗羅のお願い
   〜海視点〜


ホームルーム中に帰りの支度を終えていた俺は、ホームルームが終わると同時に席を立ち足早に教室から出ようとする。


「海っ!」


名前を呼ばれ振り返ると、小走りで俺に近づいてくる麗羅チャンが居た。


あっ、麗羅チャンに暫く一緒に帰れないこと言うの忘れてた!


「麗羅チャン俺、暫く放課後行く所があって一緒に帰れそうにないんだ。

ごめんね」


「そうなんだ・・・いいよ!気にしないで」


そう言って麗羅チャンは悲しそうに微笑んだ。


「あのね、海に聞きたいことがあって・・・」


麗羅チャンの言葉の続きを促すように、何?っと言葉を返す。


「栄実の好きなもの教えて貰えないかな?


食べ物とかで・・・海なら知ってると思って」


麗羅チャンの言葉に俺は即座に答える。


「ん〜栄実は基本好き嫌いはあんま、ないなぁ〜でも甘いものには・・・目がない!!


特にチョコレート系のお菓子食べてる時が1番、幸せそうだな」


お菓子を食べている時の栄実の幸せそうな笑顔を思い出し、俺は笑顔で答える。


麗羅チャンはそんな俺を少し驚いたような顔で見ていたが次の瞬間には微笑み


「そうなんだ!海は栄実のことよく知ってるね」っと言った。


その言葉に俺はまた嬉しくなる。


さっきの麗羅チャンの"海なら知ってると思って"っという言葉のせいで、俺はつい天狗になりいつもよりペラペラと喋ってしまった。


「ありがとう。参考になったよ」


麗羅チャンはニコリと笑いお礼を言う。


あっ、そういえば!


「麗羅チャン今朝、俺にお願いがっとか言ってなかった?」


「あっ、うん。


明日栄実の家に行きたいから栄実の家教えて欲しいの」


俺の質問に麗羅チャンは真面目な顔で答える。


「栄実・・・家に行っても多分出てこないと思う」


俺はばつが悪そうに正直な意見を述べる。


「それでもいいの・・・私に出来ることしたいだけだから。


自己満足なんだけど・・・」


麗羅チャンは苦笑いを浮かべていたが、言葉から強い意志が読み取れる。


「分かった。じゃあ明日帰りに案内するよ」


俺がそう申し出ると麗羅チャンは少し目を見開きブンブンと首を横に振る。


「えっ、でも海行く所があるんでしょ?

地図とか書いてくれたら行けるよ」


必死に遠慮する麗羅チャンに、笑いを零し答える。


「案内した後行くから大丈夫だよ」


俺の言葉に麗羅チャンは笑顔でお礼を言う。


「あっ、じゃあ電車の時間ヤバいから行くね!また明日」


俺は麗羅チャンに手を振り教室から走って去って行く。

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