《MUMEI》

両サイドにずらりと並んだ座席。

祭壇へと続く中央の赤い絨毯の上を歩いていくと、ある物が目に止まりました。

「‥ぁ‥」

十字架──‥。

「リュート‥?」

「! ‥はい」

「ぁ‥、十字架──苦手だったんだよね、ごめん‥」

「いえ、──大丈夫です」

完全なヴァンパイアであった頃は、見るだけで気分が悪くなってしまったりしたのですが、今の僕は半分は人間。

その御陰か──今はさほど苦にはなりません。

「ところでアンリ様──‥此処で何を‥?」

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