《MUMEI》

「一応どっちも──」

「一応!? 一応だと!?」

「な、何でそんなに怒ってんだよお前‥」

「とっ‥とにかくその紐を返せっ」

 あまりに騒ぎ立てる雛菊に、草助はぽかんとしながら紐を返した。

 雛菊は紐を受け取るなり、焦った様子で髪を束ねた。

「下ろしてんの嫌なのか?」

「こ‥、この方が都合が良いのだ」

 雛菊は些か動揺しているように見える。

「お前も結ったらどうだ草助」

「俺はこうしてる方が都合いいからさ」

「──────‥」

「よしっ、出発すっかな」

「ようやくか」

 雛菊は呟き、竹刀を片付け始めた。

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