《MUMEI》 「なあ……。」 太陽が高く上った今、 熱い日差しが俺達を照らしている。 さすがに暑すぎるので、場所を変えようと提案したのだが、 やはりあっさりと断られた。 それほどの覚悟が、 颯ちゃんの親父に必要なのだろうか? 「何?」 「いや、なんでもない……。」 「そうか。」 さっきからずっとこの調子だ。 俺には颯ちゃんに慰めの言葉一つ掛けられないのか? 情けなく思う。 非力な自分に。 俺が今のように、ダチやチームメイトと楽しくつるめるのは、 颯ちゃんのおかげなのに。 そんなことを考えていると、 いつの間にか颯ちゃんの家に来ていた。 「ここで待って居てもいいか?」 それは、今の俺が颯ちゃんにできる、 最低限のことだった。 颯ちゃんは、驚いたように目を見開くと、 またいつものように、 俺と賢ちゃんにしか見せない、 優しい目付きになった。 だけど、 「いや、いいよ。 有り難な。」 断られた。 まただ。 どうしていつも颯ちゃんは、 そんなにも自分を追い詰めるんだ? どうして少しは“人”に頼らないんだ? 前へ |次へ |
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