《MUMEI》

「なかなか楽しかったな、大道芸とやらは」

 満足げな表情をして歩く雛菊を見つつ、草助は頭を捻っていた。

「なぁ、お前さぁ」

「ん‥?」

「ひょっとして‥上流の武士の孫、とか──」

「なっ‥そ、そんな筈が無かろう!」

「そうか‥?」

「そうだっ。拙者は断じてそのような‥」

「ゎ‥、分かった分かった」

 それ以上は訊かない方がいいと悟った草助は、雛菊の機嫌を直そうと団子屋を示した。

 するとたちまち雛菊は目を輝かせて店に飛び込んで行った。

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