《MUMEI》

御互いに手を取り合って歩く小道。

向こうの空には、指輪に嵌め込まれたダイヤモンドのように煌めく星が瞬いています。

雪を踏み締めて進みながら、時折斜め右に顔を向けると、アンリ様と目が合ってドキリとさせられます。

「──今晩は‥何を御召し上がりになりますか」

「うーん‥」

アンリ様は空を見上げて御考えになりながら、歩調を緩める事無く歩き続けます。

「暖かい物なら何でも」

アンリ様が『何でも』と仰るのは、僕を御気遣い下さっているから。

まだあまりレパートリーの無い僕が負担にならないようにと、そう御考えになってらっしゃるようなのです。

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