《MUMEI》

「…また泣いてたのか」



裏口から出てくると、椎名くんはそう言ってにやりと笑った。



「な、泣いてないよ!!」



私が慌てて言うと、



「…そっか」



椎名くんは優しく微笑んで、私の頭を撫でた。



「…お前の父ちゃんから、なでなでプレゼント!」



そう言って私の頭から手を離すと、



「うあー!腹へった!!
…今日の晩飯は、おれの取り分な♪」



と笑って自転車の方へ歩いていった。




ドキドキ、してる。




『私』の―…椎名くんの背中に、語りかける。



椎名くん、



椎名くんは今日、たくさんのプレゼントをくれたね。



手作りのケーキも、


パパからの言葉も、



屈託のない笑顔も、





―…この、ドキドキも。





私にとっては、

ぜんぶ、かけがえのないプレゼントだよ。


―…椎名くんがいてくれたから、



最高の誕生日になったよ。




ありがとう。

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