《MUMEI》 星 〈おれ〉2人乗りで帰路につく。 いくら事情があるとはいえ、 女に自転車こいでもらうって、情けねえ… そんなことを思いながら空を見上げると、 綺麗な星空が、広がっていた。 『お父さんは、お星様になったんだよ』 ―…親父が死んだ時、 おふくろは、そんなファンタジーなこと言わなかった。 なんにも、言わなかった。 ただ、おれも… おれも、おふくろがただ黙って涙を流してるのを見たとき、 『ああ、』 って、思った。 『お父さんは、死んだんだな』 って。 ―…蓬田、 お前の父ちゃん、涙目だったぞ。 涙もろいとこ、父ちゃんに似たんだな。 …大事にしろよ。 見上げた星は、ただゆっくりと瞬いていた。 前へ |次へ |
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