《MUMEI》

家に帰って、うまい飯いっぱい食って、
ほっと一息ついたとき。



「ただいま」



蓬田の父ちゃんの声。



「あら!!…やっと帰ってきたわ」



いそいそと玄関に向かう蓬田ママ。


嬉しいんだろうな、やっぱり。



おれが、今日蓬田の父ちゃんが早く帰ってくるって伝えると、
蓬田ママは、



「食べちゃってから言わないでよ!!」



と怒りながらも、嬉しそうだった。



…おれは腹へってどうしようもなかったもんで。



1人リビングに座っていると、電話が鳴った。



「かなめ、出てくれない!?」


「ほーい」



おれは、受話器を取る。



「はい、蓬田です」


『あ、もしもし、櫻木総合病院の藤田と申します』



聞き覚えのある、落ち着いた声。


電話の相手は、おれ達が入院した時の担当の先生だった。

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