《MUMEI》

「草助、お前は食べぬのか?」

 団子を両手に一本づつ持ったまま雛菊が問うと、

「俺は茶ぁ飲んでっからいい」

草助はそう答え、湯飲みを持ち上げる。

「団子は美味だぞ?」

「俺はどっちかってぇと──握飯の方がいいからさ」

「ふむ‥ならばその握飯を何処かで──」

「いや、今の持前じゃあ米をどうこう言ってる場合じゃなさそうだから──」

「だが‥何も食べずにいては身がもたぬであろう?」

「心配すんなって。俺はそんなに腹減らねぇ質だからさ」

 草助の笑みに、雛菊は僅かに頬を赤らめた。

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