《MUMEI》

「何があったんだ?」

「小火があったらしい」

 一人の翁が振り向いて答えた。

「小火だとっ?」

 雛菊が身を乗り出す。

「怪我人は‥!?」

「いや、幸い出なかったらしい」

「そうか──‥良かった‥」

 安堵しつつ、ふと思い付いて、雛菊は翁に問う。

「最近‥良く起こるのか‥?」

「そうじゃなぁ‥近頃は特に」

 それを聞くなり、雛菊の目付きが変わった。

「許せぬ‥」

「まぁ落ち着けって」

「これが落ち着いていられるかっ。民の一大事であるのだぞ草助っ」

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