《MUMEI》 無意識の内に、僕の手はアンリ様の頬に触れていました。 いつか、この御方がして下さったように。 すると、 「───────」 アンリ様が、僅かに御顔を上げて下さいました。 頬は火照ったように染まり、瞳は潤んで涙を溜めていました。 「アンリ様──」 「‥抱き締めてくれる‥?」 「──畏まりました」 そっと、壊れないように。 優しく、包み込むように。 小さく華奢なその体は、暫しの間、僕の腕の中で小さく震えていました。 前へ |次へ |
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