《MUMEI》

「──ありがとう」


放して差し上げると、そう仰って笑顔を見せて下さったので安心しました。

「雪──止んだね」

「そうですね」

「リュートも一緒に当たろう」

アンリ様は暖炉の前に、椅子をもう1つ引っ張って来られました。

「はい、座って」

「──ぁ‥有り難うございます」

口から出るのは、相変わらずのぎこちない返事。

緊張してか、動悸がしてか、まだ僕はこの御方に上手くに接する事が出来無いようです──‥。

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