《MUMEI》
寝床確保
「……悪い。今まで気付いてやれなくて」
「何言ってんだよ。お前が気にするようなことじゃないだろ。それに、こんなに仲間もいる」
「そっか。そうだな」
 ユウゴは控えめに頷いた。
「さっき、プロジェクトを止めるために戦ってるって言ってたけど、それがあれなの?」
 ユキナが話題を代えるように聞いた。
由井は包帯を巻き終わった腕をグルっと回して頷いた。
「ああ。このプロジェクトに参加してる奴らは、大体ほとんどが無理矢理だ。
逃げ道があるなら逃げ出したいと思ってるはず。だろ?」
ユウゴは頷いた。
「だから、どこか一カ所でも警備に穴が開けば、そっから逃げることができる」
「確かにそうだけど、それからは?プロジェクトから逃げ出した人が、この国で平和に暮らしていけるとは思えないんだけど」
「ああ。だから、もしうまく街から逃げ出すことができたら、そのまま国からも出れるように手配してある」
「マジで?すげえな。お前らが持ってる武器といい、どっからそんな金が出てんだ?」
 すると何故か由井や、さっきの白髪混じりの男、その近くにいた全員が悲しそうに目を伏せた。
「死んだ人たちの遺産や、生き延びた人たちの賞金とかで賄ってるんだ」
「……そう」
ユキナが気まずそうに頷いた。
「ああ、でも。あの武器のほとんどは支給品だけどな。
俺たちも普通にくじを引いたら、半分以上は鬼だった。俺も鬼。ちなみに目標人数は二十人」
「二十人?そんなにでかい数なのか」
 ユウゴは目を丸くした。せいぜい多くて十人くらいだろうと思っていたからだ。
「っていうことは、お前は子なんだな?一緒にいるってことは、その子も?」
二人は頷いた。
「へえ。じゃあ気をつけろよ。いきなり俺が襲うかもよ?」
由井はさっとズボンから銃を取り出して撃つ真似をした。
「やめろ、マジで」
由井は面白そうに笑うと銃を置き、「それで」と言葉を続けた。
「お前らを仲間にいれてやりたいところなんだけどな、悪いんだけどできない」
「なんで?」
 ユキナは不思議そうに聞いた。
普通この流れだと、お前も仲間にならないか?と続くと思うのだが。
「ああ、その、俺たちは仲間意識は強いんだけど、仲間以外の人間に信用をおけない」
言いにくそうに由井は頭を掻いた。
「ああ、当然だろ。こんだけ危険な活動してたらな」
 実際、さっきからユウゴ達を遠巻きに見ている人達の視線が痛かった。
それはユキナも感じていたらしく、素直に頷いている。
「けど、今日一日ぐらいは泊めてやるよ。どうせ寝るとこないんだろ?」
 由井のありがたい申し出にユウゴは礼を言った。
その時、遠くから見ていたまだ十代の少年が口を出してきた。
「由井さん。俺らはそんなの許可したくないんですけど」
少年の言葉に周りの人間が頷く。
「たとえ、由井さんの友達でも、そいつらがスパイじゃないという証拠はどこにもないじゃないですか」
何人かが、「そうだ」と同意を示した。
「あのな、逆にこいつらがスパイだっていう証拠もないだろ。じゃあ、お前は、お前の親友が困ってるのを見捨てるのか?」
少年は「それは……」と俯いた。
「別に仲間に入れようっていうんじゃない。今夜一晩だけ泊めてやろうって言ってんだ。どうせ、ここの場所は今日しか使わないんだから」
由井の言葉に少年たちは渋々頷いた。

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