《MUMEI》

「なんだー、お洒落しなかったな」

武丸先輩と遊ぶ約束をした。私は友達なんてものとそんな経験ないものだから、遊ぶ時にはお洒落をしなきゃならないなんて知らなかった。
そもそも、お洒落を知らなかった。


『どうせ、制服が1番お洒落だろ?』

小指に絆創膏を巻き直してやる。


「らしいけどね、いじけんなよ。かーいいかーいい」

武丸先輩は頭を撫でてくる。
ゴツイリングが指に沢山付いているのが分かった。
武丸先輩はピアスやアクセを付けて黒を基調とした高そうな服装だ。
ゴスやパンク路線なのだと教えてくれた。

私のTシャツジーパンという恰好では武丸先輩との間の空間が歪んだようだ。



「何処に行けばいいんでしょうね……」

誰かと遊びに行ったこと無いから分からない。


「ゆっるいなあ……。デートなんよ?好きなとこ行けばいいじゃんよー。いつも何処行くの?」

先輩的には今日はデートらしい。


「……河原」

「河原ダセェ……ムグ!」

小指を掌に押し付けてやる。


「河原行きた〜い」

私を変だと言うが、武丸先輩も大概変わっている。

私は、学校帰りに遠回りをしながら河原に沿って帰るのが好きだった。
途方も無い永遠に続く流れを眺めながらひたすらに歩くのだ。

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