《MUMEI》

「アンリ様の御側に居させて頂く為、です」

「───────」

アンリ様は、たちまち目を円くされました。

「じゃあ、制御印を掘ったのも‥」

「──はい」

「リュート‥」

「如何なされました‥?」

御返事は返って来ませんでした。

その代わり──

「アンリ様‥?」

華奢な腕が、僕に絡んできたのです。

「あの、アンリ様──」

「ありがとう」

「‥?」

「ありがとう、リュート──」

アンリ様は何度も、『ありがとう』──そう仰って下さいました。

僕は抱き締められたまま、夢のような気分に浸っていました──。

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